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騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
ผู้แต่ง: 葉山心愛

第1話 帰国

ผู้เขียน: 葉山心愛
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-10-24 15:47:37

『麻菜、キミに決めたよ』

この一言で全てが変わってしまった。

わたしが選ばれたことによって大きく運命が動き出したと言っても過言ではない。

17歳からここ、アメリカに住み始めて早7年。

わたし、加藤麻菜かとうまなは24歳になったばかりだ。

父はアメリカ人で、高校生の時ここ、アメリカに渡った。

7年もいるのに、英語が苦手で話すことすら出来ない。

そんなわたしの支えとなってくれたのが今の上司で、わたしを指名した人……。

大学を卒業し、この上司の紹介でこの企業に就職を決めた。

わたしが勤めるのはアパレル業界でも有名な「STAR☆」という会社。

レディースが主だが、最近はメンズやキッズにも焦点を当て全米で注目を浴びている企業の一つ。

昔から洋服が大好きだったわたしは、この企業への就職が決まった時、跳びあがる程嬉しかった。

ずっとこの会社で働いていこう。

このアメリカ本社で……

わたしには他に行くあてもないし、一生アメリカで生きていこうと思っていた。

そう思っていたわたしの願いが一瞬にして打ち砕かれてしまった。

「ジョン!どうしてわたしを指名したのよ!!」

わたしが怒りをぶつけるのは、わたしを指名した張本人。

わたしの上司のジョン・テイラー。

どうしてわたしがアメリカ人の彼に日本語で話しているのかというと、彼は日本語が得意だから。

アメリカへ来たばかりに友人となった彼は、英語が話せないわたしの通訳となってくれた。

そして、その彼が今は上司。

「STAT☆日本店」の売り上げが伸び悩んでいて、本社から売り上げを上げるべく助っ人として白羽の矢が立ったのがこのジョンだった。

「仕方ないだろう?一人が困難だと思ったら、誰か一人だけなら連れて行ってもいいって許可もらったんだから」

「だからって、どうしてわたしなのよ!!下っ端のわたしなんかより、有能な人を連れていけばよかったじゃない!」

どうしてもアメリカ本社にいなければならないという理由はない。

ただ……

送られる先が日本というのが問題なのだ。

もう二度と戻ることはないと誓った日本に行かなければならないということが……。

「君も十分有能だ。それに……」

ジョンはわたしの肩をそっと引き寄せ、わたしの髪をすくった。

「君と離れるのは辛いんだ。僕は君がいないと生きていけない」

耳元でこう囁く彼は、どんな女性も虜にしてきたプレイボーイだ。

わたしにもよく「好きだ」と言ってくるけれど、それが本気なのかは定かでない。

普段の彼から考えると、おそらく遊びだ。

「はいはい」

たとえ彼が本気だったとしても、それに応えるつもりは全くない。

彼の扱いに慣れてきたわたしは、こうして適当に受け流すことが多い。

「麻菜も嬉しいだろう?また僕と一緒にいられて」

「はぁ?嬉しいじゃなくて疲れるの間違いじゃないの?」

確かに友人として一緒にいるのは楽しいし、上司としての彼はとても頼りになる。

でも、わたしの楽しいと彼の楽しいの基準が違いすぎていて、一緒にいて疲れるのも事実だ。

「全く麻菜は……素直じゃないんだから」

「大きなお世話よ」

「そういうツンケンしてるところも可愛いよ」

口角を上げ、顔を近づけてくるジョン。

キッと彼を睨んでから、わたしは彼の足をこれでもかというくらい強く踏んだ。

「何するのよ!そういうことするなら、二度と口きかないって言ったでしょ?」

「いてて……だからって、足踏むことないだろう……いってー」

痛そうに顔をしかめながら、踏まれた方の足を上げプラプラと動かしているジョン。

ヒールのある靴で踏んだから、かなり痛いみたい。

「僕がこんなに好きだって言ってるのに、麻菜はいつも冷たいんだから」

「バッカじゃないの!?わたしは、もう恋愛はしないの。何度も言ってるじゃない」

「そんな寂しいこと言うなよ。僕と恋愛しよう?」

「絶対お断り!!」

これ以上関わると面倒なことになりそうなので、フンっとそっぽを向いて歩きだした。

本当にジョンは本気なのか冗談なのかよく分からない。

わたしに好きだと言ったと思ったら、平気で他の女とデートをしてる。

別にジョンのことをどう思ってるわけでもないから、わたしには関係ないのだけれど。

「あっ、麻菜。今週末に日本に行くから準備しといて」

「……分かった」

わたしが行くことで話が進んでしまい、断るに断れなくなってしまって……

結局わたしがジョンと一緒に行くことになった。

何も起きなければいいのだけれど……

特にあの人に会ってはならない。

絶対に……

「久々の日本なのに嬉しくないのかい?」

「……別に」

飛行機に乗り数時間、日本に近づくにつれ、気分がどんどん落ち込んでいく。

どうして今、自分がこの飛行機に乗っているんだろうと今更になって後悔してきた。

本当ならずっとアメリカ本社で頑張っていくつもりだったのに、この隣の男のせいで。

日本行きを決めたのに、無理やりにでもアメリカに戻りたくなってくる。

全てがこの男のせいだと思い、キッとジョンを睨み溜息を吐いた。

「おいおい、そろそろ機嫌を直してくれよ。向こうで暮らす手はずは全て僕が整えただろう?」

「わたしはそれにも文句があるんです!」

「文句?僕はお礼される覚えはあるけど、文句を言われる覚えはないよ」

「確かに住む家を見つけてくれたのには感謝するけど、どうしてジョンと隣同士なのよ……はぁ」

そう……

ジョンがわたしと二人分の家を見つけてくれたのはいいのだけれど……

よりにもよって、ジョンと隣同士なのだ。

「よかったね、麻菜。これからは僕と会社でも家でも一緒だよ」

「何が一緒だよ、よ!一緒って言っても隣同士、一緒に住むわけじゃないんだから家でも一緒はおかしいでしょ」

「あー、そうか。麻菜は僕と一緒に住めなくてそんなに機嫌が悪いんだね?」

「はぁ!?」

毎度のことながら、ジョンの思考回路が理解できない。

どこをどう考えたら、そんな結論に辿り着いたのか説明していただきたい……

「それならそうと早く言ってくれれば、同じ部屋を用意したのに」

「用意しなくていい」

「そんな照れなくても」

「照れてないから」

日本に着くまで眠ることが出来ず、ジョンと他愛もないことで言い合っていた。

久しぶりの帰国が楽しみで、興奮して眠れなかったわけではない。

あんな最悪の形で日本を離れてしまったから、帰ることに後ろめたさを感じるのだ。

そして、ついに到着してしまった日本。

久しぶりに戻ってきた日本は、懐かしくて切ない……そんな匂いがした。

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